律は戸惑っているように見えたが、ゆっくりと席から立ち上がり、俺の隣へとやってくる。


「ん」

ポッキーを差し出すと、律はやっぱりゆっくりと、右手を差し出す。


その手に、半ば無理やりポッキーを一本渡すと、律はそれを口に含む。
ポキ、と律の手もとでポッキーが折れる。



「達樹、永倉さんと仲良かったっけ?」

コーヤが不思議そうにそう尋ねてくる。だから、俺は。




「うん、友達」


少し気恥ずかしさを感じながらもそう答え、チラ、と律を見ると……律は俺を見て――微笑んだ。


恥ずかしさが増す。でも、嫌な気持ちじゃなかった。




この日を境に、コーヤと尚也も律と仲良くなった。声が出ないというハンデを持っている律とも、二人は普通に接している。


律の笑顔が増えた。

学校で律の笑顔が見れるようになったことが凄く嬉しい。


この調子で、律の高校生活がより楽しいものへと変わっていきますように――。