《え? 私にくれるの?》

「変質者が出るって昨日言われただろ。でっかい音出るらしいから、何かあったら鳴らせよ」

何でもない様子を装って言っているけど、内心は恥ずかしくて照れている。

でも、無事に渡せて良かったと安心もしている。


《どうやって音出すの? あ、この紐引っ張るの?》

「違うって。それただのストラップ。音を出すには中心のボタン押すんだよ。結構強めの力でな」

《なるほど》


良かった。この様子なら、本当に何かあった時、ちゃんと使ってくれそうだ。


でもな、律。これは別に……同情なんかじゃないんだ。


ただ純粋に、心配なだけなんだよ。



「じゃ、今度こそ教室戻ろう」


そう言って、今度は俺が先に歩き出したその時ーー



《……嬉しい》

「え?」


振り向くと、律が満面の笑顔を浮かべていて。



《ブザー。ありがとう!》




……うん、と素っ気なく答えることしか出来なかったけど、きっと、同情なんかじゃないってことは伝わったと思う。


せっかくテレパシーが使えるのだがら、会話だけじゃなくて、そういう思ってること、全部伝わればいいのに。