月日は流れて、現在。

俺は、今日から高校生となる。



「皆、入学おめでとう! これから三年間、皆の担任となります斉藤です。よろしくな!」

キラリと光る白い歯を見せて笑う男性教師。年齢は二十五歳らしく、やたら爽やかだ。


俺は、担任の言葉はあまり聞かずに――聞く気になれずに、窓際の後ろから二番目の席から、窓の外で満開になっている桜の木を見ていた。


大木の枝の先で開花している花びら、はらはらと風に乗って舞い落ちる花びらを、ボーッとしながら見つめる。



――中二の頃までの俺だったら、高校生活の初日なんて、希望に満ち溢れて、高揚して、そわそわして仕方なかっただろう。少なくとも、こんな風にボーッと窓の外を眺めたりなんてしていなかったはずだ。



すると担任が、俺達にもひとりひとり自己紹介をしていくように促したのが、何となく聞こえた。



初日ということで、名簿番号など関係なく自由な席に座っているのだが、窓際の最前列に座っている人から順番に立ち上がって、名前やら出身中学やら、適当に言っていくことになった。