夕べと同じで、急にテレパシーが使えなくなった。

そう言えば、昨日のテレパシーが使えなくなったのも、今日のテレパシーが使えなくなったのも、テレパシーを使い始めてから十分間くらいだ。


「十分間使える能力、ってことか?」


俺がそう言うと、律が突然俺の手をギュッと握ってきた。


……不意打ちでそんなことをされて、ついドキッとしてしまった。
急に女子に手を握られたら、そりゃあ誰だって動揺してしまうだろ! と、自分自身を心の中で必死にフォローした。

なんて馬鹿なことを考えていると、再び頭の中にキーンという音が響いてきてーー


《そうみたいね》

冷静な口調で、律がテレパシーでそう言った。


《つまりこの能力の使用時間は十分間。それを過ぎると、もう一度手と手が触れ合うまでテレパシーは使えないってことみたいね》


「触れ合ってから十分間ってことか?」


《それは違うと思う。それだと昨日の説明がつかないから。昨日は、手が触れ合ってからテレパシーを始めるまで結構時間があったでしょ? ということは、恐らく手が触れ合うのはテレパシーの発動条件っていうだけで、実際にテレパシーを使い始めてから十分間が使用時間なのよ》


なるほど。律の冷静な分析に、俺は頷くことしか出来ない。