《まあ、手と手が触れ合うことが条件じゃなくて、抱き合うことが条件かとも考えたんだけど》

「だっ……⁉︎」

《正解は、触れ合うことだったみたいね》


俺達は、とりあえず階段の最上段に並んで腰掛け、会話することにした。


屋上に入る為の入り口のドアについている小さなガラス窓から差し込む朝日に照れされ、少し眩しい。



《えーと。俺からの声も聞こえる?》

心の中でそう話し、隣にいる律に問い掛けると。


《うん、聞こえる》

と、返ってくる。良かった。間違い無くテレパシーが出来ている。



《えーと、その。あれだ》

《何?》

《こ、この能力、ほんと不思議だよな》

《そうね》

《あとは、えと……》

《うん、何?》

《えと……》


……情けない。律とまたテレパシーしたいってあれだけ思っていたのに、いざそれができた途端、興奮と緊張で言葉がまるで出てこない。
俺と対比して律はほんとに冷静だから、俺も落ち着かなければと思うけど、意識すればする程、余計に焦ってしまう。


そんな俺が、しぼり出すように発した言葉が。


「……はたから見たら俺たち無言で見つめ合ってる怪しい男女な気がするし、俺は普通に喋るわ」


……だった。

律も、《そうね》と頷いてくれた。


そうして少しだけ落ち着いた俺は、律にある提案をした。


「時間のある時、ふたつ祈りのことやあの神社のこと、もっと調べてみないか?」


もしかしたら、このテレパシー能力についての謎や秘密が何か分かるかもしれない。


《分かった。とりあえずあの神社の神主さんに話を聞いてみるのはどう?》

律のその提案に、俺も「そうしよう」と返した。