翌朝。
朝練が休みだった為、いつもより早い時間に教室に向かう。

俺が教室に入ると、律はもう自分の席に着いていて、一人で本を読んでいた。

俺は律の隣に立ち、律の肩をちょんとつつく。

俺に気付いた律は、視線を本から俺へ移し、じっと見つめてくる。


「えっと……昨日のことだけど。ちょっといい?」

言いながら廊下を指差すと、律は読みかけの本を机の中にしまい、俺と一緒に教室を出た。


とりあえず、お互いに無言で廊下を歩く。
目的地は勝手に決めている。確か屋上は立ち入り禁止になっているって聞いたから、屋上の入り口前の踊り場なら誰も来ないと予想して、そこへ向かう。


歩きながら、心の中で何回か(律、律)と呼び掛けてみる。が、律からのリアクションは何もない。テレパシーは発動しなかったようだ。やっぱり、あの能力はもう消えてしまったんだろうか。