少し弾んだ声でそう言われると……何も言えなくなる。
そうだよな……律は、中二の冬に手術で声帯を取ってから、人と会話をすることが極端に減っただろう。
特に高校に入学してからは、律に話し掛けるクラスメイトはほとんどいない。
誰かと会話することなんて、俺にとっては当たり前のことだけど、今の律にとってはそうじゃないーーそれを思い知らされた気がした。
《……そうだよな》
俺はひとまず、あくまでひとまずだが、このテレパシー能力のきっかけだとか、そういうことについてごちゃごちゃ考えるのはやめた。
《だけどさ。そうは言っても、ずっとこのままだったらどうするよ? お互い、プライバシーなくならねぇ? そりゃあ、思考が読み取れる訳じゃなくて、あくまで会話が出来るだけの能力みたいだけど……。
……ん? 律? 律?》
突然、律からの返事が途絶えた。
律が何も話さなくなったのか、もしくは律からのテレパシーを聞くことが出来なくなったか。
どちらが正解かは分からないが、恐らく後者だと思った。
テレパシーを使い始めてからついさっきまでずっと頭に小さく響いていたキーンという音が、気付いたら聞こえなくなっていたから。
テレパシーを使っている間は、あのキーンという音が、律の声と同時にずっと頭の中で聞こえていた。
耳に聞こえるのではなく、頭に響くという不思議な感覚だった律の声と、キーンという音。
多分、あの音が聞こえている間はテレパシーが使えたのではないだろうか。
明日、学校で律に会えば、もう一度テレパシーが使えるようになるのだろうか? それとも、今だけの奇跡だったのだろうか?
テレパシーで会話出来ていたのは、約十分間だった。
この十分間だけの奇跡だったとしたら、もうテレパシーを使えないことを、何だか寂しく感じてしまう。
言い伝えも奇跡もどうでもいいと思っていたけれど、こんなに不思議な体験をしておいて冷静でいられるほど、俺はまだ大人じゃなかった。
とにかく、今一人で考えていても、その答えが出せる訳ではない。
まずは明日、律に会わないと。
だから今日はもう寝よう。
そう思って、ベッドに入り込んだ後、数学の宿題を放置していたことに気付き、とりあえず机に向かった。
でも、テレパシーで律と会話していたことで頭も胸もいっぱいで、宿題なんて全然集中出来なかった。
そうだよな……律は、中二の冬に手術で声帯を取ってから、人と会話をすることが極端に減っただろう。
特に高校に入学してからは、律に話し掛けるクラスメイトはほとんどいない。
誰かと会話することなんて、俺にとっては当たり前のことだけど、今の律にとってはそうじゃないーーそれを思い知らされた気がした。
《……そうだよな》
俺はひとまず、あくまでひとまずだが、このテレパシー能力のきっかけだとか、そういうことについてごちゃごちゃ考えるのはやめた。
《だけどさ。そうは言っても、ずっとこのままだったらどうするよ? お互い、プライバシーなくならねぇ? そりゃあ、思考が読み取れる訳じゃなくて、あくまで会話が出来るだけの能力みたいだけど……。
……ん? 律? 律?》
突然、律からの返事が途絶えた。
律が何も話さなくなったのか、もしくは律からのテレパシーを聞くことが出来なくなったか。
どちらが正解かは分からないが、恐らく後者だと思った。
テレパシーを使い始めてからついさっきまでずっと頭に小さく響いていたキーンという音が、気付いたら聞こえなくなっていたから。
テレパシーを使っている間は、あのキーンという音が、律の声と同時にずっと頭の中で聞こえていた。
耳に聞こえるのではなく、頭に響くという不思議な感覚だった律の声と、キーンという音。
多分、あの音が聞こえている間はテレパシーが使えたのではないだろうか。
明日、学校で律に会えば、もう一度テレパシーが使えるようになるのだろうか? それとも、今だけの奇跡だったのだろうか?
テレパシーで会話出来ていたのは、約十分間だった。
この十分間だけの奇跡だったとしたら、もうテレパシーを使えないことを、何だか寂しく感じてしまう。
言い伝えも奇跡もどうでもいいと思っていたけれど、こんなに不思議な体験をしておいて冷静でいられるほど、俺はまだ大人じゃなかった。
とにかく、今一人で考えていても、その答えが出せる訳ではない。
まずは明日、律に会わないと。
だから今日はもう寝よう。
そう思って、ベッドに入り込んだ後、数学の宿題を放置していたことに気付き、とりあえず机に向かった。
でも、テレパシーで律と会話していたことで頭も胸もいっぱいで、宿題なんて全然集中出来なかった。