《悪かったな、待たせて》

《大丈夫だよ。何してた?》

《律が言ったことが気になったから、姉ちゃんに心の中で呼び掛けてみた。でも反応はなくて、俺がテレパシーで会話が出来るのは律だけみたいだ》


すると律も。


《実は、私も今同じことやってみたよ。リビングにいるお母さんとお父さんと妹に、心の中で呼び掛けてみた。私も、誰からも反応はなかった》


ということはやっぱり、このテレパシー能力は、俺と律の間だけに生じる能力のようだ。


原因を詳しく調べるべきだろうか? でも、調べるといってもどうやって?
ふたつ祈りがきっかけなのか、そうでないのか、まずはそこから探ればいいのだろうか?


と、俺は真剣に考えるのだが、一方の律は、


《達樹君が私より成績良かったら、この能力を使ってテストでカンニングし合おうよって話を持ち掛けるのに》


なんて、クスクス笑いながら言ってくるのだ。



《言っとくけど、俺そんなに成績悪くないぞ。中学時代は、いつも十番台だった》

《私は十番以内だった》

《それは確かに……って、そうじゃなくて! お前はなんでそんなにお気楽なんだよ! テレパシーだぞ! 超能力だぞ! もっと慌てないのかよ! 一体どうしてこんなことに、とか、これからこの能力とどう付き合っていくのか、とか!》


怒っている訳ではないのだが、つい感情的になってしまう。もっとも、声には出さずに心の中で話しているだけなのだが。



すると、律は。



《だって、何か嬉しいんだもの》

《え?》


《私、家族以外の人とこんな風に楽しく会話するの、凄く久し振りだから》