『そうだなぁ。うーん……』
考え込みながら、律は窓の外に身体を向け、正面から夕日を浴びる。
正直、律が何と答えるかはどうでも良かったので、俺は日誌の続きを書いていく。
今日の主な出来事、という欄を見て、特に何もなかったな、と思った。
『そうだ!』
突然、律が身体を反転し、足を床に着け、再び俺に向き直った。
夕日をバックにそこに立つ律は、
『超能力で、達樹君のことを世界一の幸せ者にしてあげる』
そう言って、満面の笑みを見せてくれた。
……何、言ってんだと思いつつ。
心臓が、ドキンと脈打つのを感じた。
律はいつもの思いつきでそう言っているだけで、そこに深い意味なんてないのは分かっている。
それでも、俺は。
『バ、バカ。俺を幸せにしたいと思うのなら、まずは日誌の記入を手伝え』
急に気恥ずかしくなって、律から視線を逸らして日誌の記入欄を凝視する。
律が、俺のそんな異変には全く気付いていなさそうなのが救いだった。
こんな感覚は初めてだったけれど、”変な病気かもしれない”と思うほど子どもでもなかった。
中二の夏。
俺、長尾 達樹が初恋に落ちた瞬間だった。
考え込みながら、律は窓の外に身体を向け、正面から夕日を浴びる。
正直、律が何と答えるかはどうでも良かったので、俺は日誌の続きを書いていく。
今日の主な出来事、という欄を見て、特に何もなかったな、と思った。
『そうだ!』
突然、律が身体を反転し、足を床に着け、再び俺に向き直った。
夕日をバックにそこに立つ律は、
『超能力で、達樹君のことを世界一の幸せ者にしてあげる』
そう言って、満面の笑みを見せてくれた。
……何、言ってんだと思いつつ。
心臓が、ドキンと脈打つのを感じた。
律はいつもの思いつきでそう言っているだけで、そこに深い意味なんてないのは分かっている。
それでも、俺は。
『バ、バカ。俺を幸せにしたいと思うのなら、まずは日誌の記入を手伝え』
急に気恥ずかしくなって、律から視線を逸らして日誌の記入欄を凝視する。
律が、俺のそんな異変には全く気付いていなさそうなのが救いだった。
こんな感覚は初めてだったけれど、”変な病気かもしれない”と思うほど子どもでもなかった。
中二の夏。
俺、長尾 達樹が初恋に落ちた瞬間だった。