《でも、本当に私たちの間に芽生えた能力なのかしら? ほら、たとえば私か達樹くんのどちらかに〝誰かとテレパシーで話すことが出来る能力〟が身に付いた、っていう可能性は?》

律にそう言われ、確かにその可能性もあるな、と思った。


《よし、確かめてくる。ちょっと待ってて》

率にそう告げて、一旦部屋を出ようとしたその時、ちょうど姉が俺の部屋を訪ねてきた。


「達樹、何か漫画貸してくんない? 面白いやつ」

「なあ姉ちゃん。今、俺が考えてること分かる?」

「はあ?」

怪訝な顔で俺を見る姉へ、俺は心の中で、姉ちゃん、姉ちゃん、と呼び掛けてみるが……


「ちょっと何なの、あんた。慣れない高校生活に疲れて頭おかしくなってんじゃないの? さっさと寝ろよ」

どうやら、姉には俺の心の声ーーテレパシーは届いていないようだ。


姉が俺の本棚から漫画を数冊持って部屋から出ていくと、再び部屋の中に一人きりになる。


《律、お待たせ》

心の中で声を呼び掛けると、


《はーい》

と、律の声がやっぱり頭に響いてくる。