……は?

何だ? 今突然、律の声が聞こえたような……。
いやいや、聞こえるはずないだろ。ここに律がいる訳じゃないんだし、そもそも律は声が出ない……。


高すぎず低すぎない、落ち着いていて、どこまでも澄み渡っていきそうな、凛とした声。
もう一年以上聞いていないけど、忘れもしない、初恋の人の声だった。

その声が、戸惑ったように俺の名前を呼んだ。
いや、呼んだ気がした。

俺は、そんな幻聴を聞くほどに、律のことを考えていたのだろうか。


どうせ幻聴なら、せっかくだし返事でもしてみるか。


ーーよお、律。


なんつって。


しかし、俺の耳には再び、先程のような幻聴が聞こえてくる。


《やっぱり達樹君なの⁉︎ どういうこと⁉︎》



それは、幻聴と呼ぶにはあまりに生々しく、鮮明で。
しかし、それだけハッキリとした感覚はあるのに、この現実はどこまでも信じがたい。こんなこと、そう簡単に信じられるはずもない。


だけど……



「ほ、本当に律なのか?」


信じられなくても、認めなくてはならない気がした。これは、どうやら夢でも幻聴でもないようだから。