願いごとを終え、目を開けて隣を見れば、律が俺のことをじっと見ていた。


「あ、ごめん。待たせちまって」


もしかしてそんなに長い間、願っていたんだろうか。何か、恥ずかしい。


「さ、帰ろうぜ。ますます暗くなっちまう」

照れを誤魔化すように、俺は神殿にくるりと背を向けて、さっさと階段を下り始める。律も、俺の隣を同じように歩いてついてくる。


その途中、律は携帯の画面に文章を打っていた。
階段を下りきったところで、それを俺に見せてくる。
暗闇の中でポゥッと光るその画面を見ると。


【あんなに真剣に、何をお願いしてたの?】


……そんなに真剣そうに見られてたんだ。
でも言えるかよ。律との関係を願ってた、なんて。



「部活のこととか、勉強のことだよ。ていうか、そんなに真剣じゃねーし」


【眉間にシワ寄せて、怖いくらいに真剣に見えたわよ】


「なっ……! ていうかお前、今更だけど歩きながら携帯いじるのやめろ。危ないだろ」

そう伝えるけど、律は聞き耳持たずといった感じで、再び俺への返事を携帯に打ち始める。

すると案の定、律は側溝に足を引っ掛け、バランスを崩した。


「あっ、ぶね!」

とっさに律の手を握って身体を支えようとしたけれど、上手くバランスが取れず、その場で抱き合うような形になってしまった。