『でも、超能力があればきっと世界だって変えられるよね』


俺の正面の席で、こっちを向きながら座っている律がそう言う。

今さっき、俺が思ったことと、同じことを。


律は席を立ち、今度は窓際に寄り掛かるようにし、肩越しに夕日を見つめる。


夕日に照らされた律の髪や顔が、優しい赤色に染まる。



『うん、まあ、その話はもういいよ。それより、今日のクラスの反省点欄、どうする?』

『どんなふうに世界を変えたいって思う?』

『お前が俺の話を聞いてくれる世界』


まったく、いい加減にしろよな。
普段の律は、真面目な奴だ。成績も良いし、責任感もあるから周りからはよく頼られている。その度に、頼まれたことはしっかりとやり遂げる。
性格もだって、誰に対しても明るいし、分け隔てが一切ない、男子からも女子からも好かれている人気者だ。
スカートが若干短く、先生に注意されない程度に化粧もしているから、優等生、と言うには少し違うのかもしれないけど、頭も良いし、その人柄故か、教師達にも好かれている。

だけど。俺とこうして日直当番する時だけ、何故か急に不真面目になる。



『じゃあ律は、もし超能力が使えたら何するんだよ』

さっさと帰る目標は諦めて、俺は律のタラレバ話に付き合ってやることにした。