「律、何でここに⁉︎ 東京にいるはずじゃ?」

俺がそう聞くと、律は何やら楽しそうに微笑むだけ。

何をそんなに笑って……あ、さっきの俺の独り言、聞かれていたから?


「あー、さっきの独り言はだな、そのー……。思わず口から出たというか、ああいや、深い意味はなくてだな……」

言えば言う程、いかにも言い訳でかっこ悪くなる。
俺としても、どうせならもっとドラマティックに再会したかった。


「ていうか、こっち帰ってきてたのなら連絡しろよ」

そうすれば、もっと心の準備も出来たのに。
勿論、こうして会えただけでとても嬉しいのだけれど。



すると律は、手話を使って。



〝東京からはさっき帰ってきたばかり。一週間後にはまた東京の病院に行かなきゃいけない。達樹君の驚く顔を見たかったから、あえて何も言わなかった〟


と伝えてきた。

「いや、言えよ。Sかよ」

そうツッコミを入れると、律はまた笑う……かと思いきや、少しだけ驚いたような顔をした。

そしてまた手話で。


〝ビックリした〟


「何が?」


〝達樹君のこと、ちょっと試したくて。わざと早めに、長い言葉を、手話で話してみたの。完璧に読み取ってるじゃん。勉強してくれたんだね〟


当然だろ、と言いながらも、俺は少しだけドヤ顔してみせた。