嬉しすぎて、何て言ったらいいか分からない。
律が顔を背けずにいてくれるから、俺も律の顔を……優しい笑顔を、見つめ返す。


「……律は、テレパシーがなくなったら普通に会話が出来なくなるって心配してたけど、これから俺、もっと手話覚える。それに……」


途中で言葉を途切れさせてしまった俺の顔を見ながら律が小首を傾げる。



「……手話以外にも、あるじゃん。気持ちを、伝える方法」


律は、まだ〝分からない〟と言いたげな顔をしている。


俺は、そんな律に、自分の顔を近付けた。


静かな夜の空気の中、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。


だけど、俺の行動の意味を理解した律がそっと目を瞑ってくれて、少し安心した。



俺は、律の唇にそっとキスをした。



言葉なんか必要ない。

こうするだけで〝好き〟という気持ちは一瞬で全部伝えられるのだから。



「あ……」

唇を離した瞬間、気付いた。

頭の中を響いていた例の音が全く聞こえなくなっている。


きっとそういうことなのだろう、と思いながら、俺達は手と手を触れ合わせてみる。




テレパシーは、使えなくなっていた。