でも、だってまさか本当に、あの頃から律が俺のことを好きだったとは思わなかった。
勿論当時〝そうだったらいいな〟とは考えていたけれど……今、律が俺のことを好きになってくれたことだって、それこそ奇跡くらいに思ってるのだから。


そんなことを考える俺に、律は続ける。


《声が出なくなる前に、達樹君に伝えたかった……さっき綾さんが庄田さんに伝えた〝二文字の言葉〟を。
だけど伝えられなかったから、何度も何度も後悔した。ふたつ祈りの噂を流した時も、達樹君のことたくさん考えてた。

だから……。綾さんが言っていたこと、私はその通りなんだと思う。
このテレパシー能力は、言葉を話せなくなった私と綾さんに、あの神社の神様がくれた……



〝一番伝えたかった気持ちを言うための力〟なんだと信じてる》



俺は黙って頷いた。
テレパシーが使えたって、神様から真相を聞くことは出来ない。
だけど俺も、きっとその通りだろうと思う。



《でも私は……その〝二文字の言葉〟を達樹くんに伝えるつもりは、ない》