この声、聞こえますか?

二十二時って……。俺は構わないけれど、そんなに遅くなったら律の親がさすがに心配するだろう。


「律。お前の家の電話番号、教えてくれる? 俺のせいで帰るの遅くなる、って電話させてもらいたいんだけど」

すると律は、少し驚いたような表情で首を横に振り、俺の手に触れる。


《別にいいわよ。達樹君が悪い訳じゃないし》

「でも、ちゃんと言っておかないと、家の人心配するぞ」

《メッセージ送っておくからいいよ。……あ、電源切れてるんだった》


結局、俺の携帯から律の家に電話をすることに。
教えてもらった電話番号に電話を掛けると。


【はい、永倉です】

三コール目で女の人が電話に出た。恐らく律のお母さんだろう。


「あ、えっと、突然すみません。俺、律……さんと高校で同じクラスの、あ、中学でもクラス一緒だったんですけど、長尾と言いーー」

【達樹くん⁉︎】

全て言い切る前に、律のお母さんのパッと明るい声が聞こえてくる。

何で俺の名前……と思ったが、中学三年間律と同じクラスだったし、名前くらいは知られていてもおかしくないか。