この声、聞こえますか?

「庄田さん、凄く普通ですね」

思わずそう口にすると、庄田さんは顔だけ俺達の方へと向ける。


その口元は緩やかに吊り上がっていて、さっきまでよりずっと晴れやかな表情だ。

何か吹っ切れたような、そんな顔に見える。



「綾が俺にずっと言いたかったっていう言葉を、聞けたからな」

言いながら、庄田さんはまた前に向き直る。やっぱり、何事もなかったかのように。



「俺は、綾さんと会話出来たことに今更ながら凄く驚いています。庄田さんは、テレパシーだって初体験だった訳じゃないですか。しかもテレパシーのこと、完全に信じてくれていた訳ではなかったと思うし。
俺が庄田さんの立場だったら、そんなに色々なことが一気に襲い掛かってきたら、もっと混乱していますよ」

俺がそう話すと、庄田さんがフッと笑うのが分かった。


「達樹君はそうかもしれないけど、俺は大人だから」

「そんなに年齢違わないじゃないですか」

ちょっとムキになってそう言い返すと、庄田さんは顔を少し上げて、堪え切れないといった感じでハハッと笑う。


……そして、そのまま空を見上げた状態で、庄田さんは言う。


「奇跡は驚くものじゃない。感動するものだぜ」

清々しそうにそう言い切る彼は、何だかかっこ良い。


そうだよな。どうして、とか、信じられない、とか、そんな感情はどうでもいいよな。

だって、俺たちが綾さんと会話したという奇跡は、紛れもない事実なのだから。