《あなたも、神様に祈っていたんでしょう? 声が出なくなっても伝えたい思いがあって、それを伝えたいって、祈っていたのよね?》
綾さんはそう言うけれど、律は《……でもあの言い伝えは、私が流したデタラメですよ……?》と答える。
神様に祈った、ということについては、否定はしなかった。
《言い伝えはデタラメでも、神様はいるのよ》
綾さんがそう言うと、律が《え……?》と聞き返す。
《声を出せない私たちが、一番伝えたい思いを届けられるように……その為に、神様がくれた奇跡なのよ》
多分ね、と付け加えた綾さんの笑い声が、最後に微かに聞こえた。
……多分、十分は経っていないけど、頭の中に響くあの音は聞こえなくなり、俺達と綾さんとの会話はそこで終わった。
庄田さんは、しばらくその場で無言で俯いたまま、涙を流し続けていた。
俺と律がテレパシーを始めて交わした頃、この能力は奇跡の力だと思っていた。
でも、本当の奇跡は、今、綾さんと話せたこと。
綾さんは、〝一番伝えたかった思い〟を届けられた。
好き、の二文字を、ようやく庄田さんに伝えられた……。
だから、テレパシーでこれ以上話すことが出来なくなったのだろう。
同時に、今度こそ旅立つことが出来たのかもしれない――。
綾さんはそう言うけれど、律は《……でもあの言い伝えは、私が流したデタラメですよ……?》と答える。
神様に祈った、ということについては、否定はしなかった。
《言い伝えはデタラメでも、神様はいるのよ》
綾さんがそう言うと、律が《え……?》と聞き返す。
《声を出せない私たちが、一番伝えたい思いを届けられるように……その為に、神様がくれた奇跡なのよ》
多分ね、と付け加えた綾さんの笑い声が、最後に微かに聞こえた。
……多分、十分は経っていないけど、頭の中に響くあの音は聞こえなくなり、俺達と綾さんとの会話はそこで終わった。
庄田さんは、しばらくその場で無言で俯いたまま、涙を流し続けていた。
俺と律がテレパシーを始めて交わした頃、この能力は奇跡の力だと思っていた。
でも、本当の奇跡は、今、綾さんと話せたこと。
綾さんは、〝一番伝えたかった思い〟を届けられた。
好き、の二文字を、ようやく庄田さんに伝えられた……。
だから、テレパシーでこれ以上話すことが出来なくなったのだろう。
同時に、今度こそ旅立つことが出来たのかもしれない――。

