頭に響く、綾さんの声。

やっぱり、関係ないのか？　ただの偶然なのか？


俺が口籠ると、今度は律の声がテレパシーで届く。



《……ごめんなさいっ》


律は、目の前にいるであろう綾さんに頭を下げ、そう言った。


《私が変な嘘を吐いたせいで、綾さんと庄田さんの最後の思い出に傷を付けてしまって……！》

俯いたままの律の目からポタポタと涙が落ち、足元を濡らしていく。

庄田さんには律の声は届いていないはずだが、彼もまた、律の姿をじっと見つめていた。律が綾さんに何を伝えているか、まるで聞こえているかのように。



すると。




《どうして謝るの？》

そっと降ってくるようなその声に、律もゆっくりと顔を上げる。


……見えないけど、きっと律のすぐ側に、綾さんはいるのだろう。



《私は嬉しかった。生きることを諦めそうになった私に、あの言い伝えが生きる希望をくれた》


元気になって、海くんとあの神社へ行きたいと思った。だから、最後の最後まで頑張れた。それなのに、謝らないで。
綾さんは律に、そう伝えた……。