この声、聞こえますか?

「この声……綾さん、なんですか?」

俺がそう尋ねると、庄田さんから
「君達にも聞こえるのか?」
と聞かれる。
俺が頷くと、律も同じように首を縦に振った。


「どこに、いるんだ?」

震える声で庄田さんがそう尋ねると、たった今頭に響いたばかりの女性の優しい声が、再び聞こえてくる。


《目の前に、いるよ》


姿は見えない。
でも、ここにいるらしい。


すると庄田さんは。



「……本当だ」

小さく、そう呟いた。



「本当に、ここにいる……」

「庄田さんには、見えるんですか? 綾さんの姿が……」

そう尋ねれば、首を横に振られる。


「見えない。でも分かるんだ。ヘラッと口元緩ませて、癖なのか少し首を横に振りながら笑う、あいつのいつもの笑顔がここにあるって……」


そう言われ、俺はもう一度、お墓の前に視線を戻す。

やっぱり、綾さんの姿は見えない。

だけど彼の言う通り、俺にも分かる気がした。

この声の主は、きっと今、笑いながら話している。


どんな笑顔なのか俺には分からないけれど、綾さんとずっと一緒に過ごしてきた庄田さんには、それが見えるように〝分かる〟のだろう。