この声、聞こえますか?

「……綾さんっ」

声の出ない律の代わりに、綾さんの名前を呼んだ。

突然でかい声を出した俺を、庄田さんも少し驚いた様子で振り返る。


庄田さんの目には、涙が溜まっていた。



「綾さんっ。もし会話が出来るなら、声を、綾さんの声を俺達に聞かせてください!」



静かな霊園にそぐわない、俺の掠れた叫び声。



庄田さんは、綾さんに伝えたいことが、きっとまだまだたくさんある。
律も、綾さんに謝りたいと言っている。
俺も、綾さんと話がしたい。
それに。



「……綾さんにも、まだ伝えたいこと、あるんじゃないですか……!」



そう叫んだ、その時だった。





《……誰かと会話するの、凄く、久しぶりだなあ》


頭の中に響く、女性の声。
律の声じゃない。
少し高くて、ゆっくりとした喋り方。
初めて聞く声。



「……綾」

庄田さんが、動揺を隠し切れていない様子でその名前を呟いた。