この声、聞こえますか?

「庄田さん?」

「綾の声が、聞こえた気がした……」

「え!?」

俺は、自分でその可能性に賭けたくせに、いざ本当にそう言われると、戸惑いを隠せない。


「綾、綾⁉︎ 今、俺の名前を呼んだよな!?」

庄田さんは、ただ必死に綾さんに呼び掛ける。
叫びにも似たその声が、薄暗い空に飛んで、消える。


本当に、綾さんなのか? 綾さんが庄田さんにテレパシーを送っているのか?


すると突然、律が俺の左手を握ってくる。

いきなりのことに驚いて律に振り返るのと同時に、律の声が聞こえてくる。


《私も、綾さんと話したい》


もう、辺りはすっかり暗くなっているのに、律の目が真っ赤になっているのが何故か分かった。
だけど律は、さっきまでとは違い、俯きはせずにしっかりと顔を上げている。


《きっと、綾さんは近くにいる。私、直接謝りたい。綾さんとテレパシーがしたい》


その表情と言葉から、律の強い気持ちが伝わってくる。