この声、聞こえますか?

それでも、俺は伝える。



「探してるんです、このテレパシー能力が生まれた理由を。もしかしたら……綾さんとも関係があるのかもしれません」

「綾と? それってどういう……」

「俺達がテレパシーを使えるようになったのは、俺達が二人で、あの神社でふたつ祈りをした時からなんです」

「え……?」


庄田さんの、見開かれた瞳が動揺で揺れる。


俺は、ふたつ祈りの言い伝えは律が吐いた嘘だということを彼に伝え、謝罪した。


「だけど……綾さんと律の病気には共通点もあるし、無関係とは思えないんです」


どんなに真剣な思いで言葉を並べたって、根拠がある訳ではない。そもそもテレパシー能力が使えるなんて話を信じてもらえるとも限らない。
それでも……あと少しで何かが分かるかもしれない、そんな不思議な気持ちがあった。
知りたい。俺と律を繋ぐ、この能力のことを。



すると庄田さんはゆっくりと口を開き……。


「家に帰るの、もう少し遅くなっても大丈夫?」

「え? あ、はい」

「もう少し、話聞かせてもらえる? その、テレパシーについての話」


信じて……もらえたのだろうか?
いや、まだ半信半疑かもしれない。
それでも、そう言ってもらえて嬉しかった。


庄田さんは、ついてきてと言わんばかりに駅とは違う方向に向かって突然、歩き始める。
思わず「どこへ行くんですか?」と尋ねると。


「これもなにかの縁、ってな。綾に会ってってくれよ」

彼は顔だけこちらに向けて、優しい表情でそう言うのだった。