この声、聞こえますか?

「律」

俺は、もう一度律に呼び掛ける。

もしここで律の手に触れてテレパシーを発動させたとしても、テレパシーは心の中が覗ける訳ではなく、あくまで心の中で会話するだけ。
だから、律に話す気がないのなら、テレパシーを使っても何の意味もない。


だから、俺からは律の手に触れようとは思わなかった。
だけど数秒後、律の方からスッと手を伸ばしてきて、俺の手に触れた。


……いや、正確には触れたというより、ギュッ……と。まるで何に縋るように、少し強い力で。そして震える手で、俺の右手を握ってきたのだった。


「……律?」

もう一度呼び掛けると、頭の中に律の声が響いてくる。



《……私、達樹君にずっと嘘吐いてたことがあった》

「え?」


すると律は、俯きながら涙をボロボロと流し始める。