この声、聞こえますか?

「あ、あの! この子、俺の連れなので、や、やめてください!」

俺が慌てて男達と律の間に割って入ると……男達は、フハハハと笑い出した。


「ごめんね。俺ら、この子に道を聞いてたんだ」

「へ?」

「でも、何も答えてくれないから俺らも困っちゃって……。あの、この辺に飯食える店とかあります? ファーストフードとかでもいいんすけど」

「あ、それなら……」

動揺しつつも、俺はさっきまでいたファミレスの場所を説明する。
男性達は「ありがとう」と言って、ファミレス方面へと歩いていく。律にも絡んでいた訳ではなかった。疑って申し訳なかった。


「おい。急にいなくなるなよ。心配しただろうが」

俺がそう言っても、律は何も答えない。
声が出せないから答えない、というのではなく、たとえ声が出せるとしても今の律は何も答えなかったと思う。全くの無反応で、ずっと俯いているからそう感じた。