「律⁉︎」

俺も慌てて立ち上がり、失礼とは思いながらも庄田さんに
「すみません、ごちそうさまでした!」
と言うと、律を追い掛けて外に出る。


しかし、店先ですぐに辺りを見回すけれど、律の姿は見当たらない。


あてもなく走りだそうとすると、後ろから庄田さんに腕を掴まれる。


「落ち着きなって。よく分からないけど、とりあえずメッセージ送ってみたら?」

「それが、遊園地を出るちょっと前に、あいつの携帯、調子悪くて充電切れちゃったみたいで……」

「そっか。じゃあ駅に先回りして待っていれば、そのうち来るだろ。電車で帰るんだろ?」

「……でも、それまでに何かあったら心配で……」

「おいおい。小学生じゃあるまいし、そんな心配することーー」

「声が出せないんです」

「え?」

庄田さんは、切れ長の目を丸くさせ、俺を見つめた。


「律も、喉の病気で。あ、完治はしてるんですけど、手術で声帯を取ったから、今は声が出なくて。だから、何かあった時に声が出せないから、心配で」

俺がそう話すと、庄田さんは目を丸くさせたまま、何度か頷く。