「え、えぇ⁉︎ そうなの⁉︎ マジか……」

俺の言葉に、庄田さんはがっくりと大きく肩を落とす。


「……ふたつ祈りが、どうかしたんですか?」

と、どこか恐る恐る尋ねてみると、


庄田さんはゆっくりと口を開き、話し始めてくれた。



「大学に入学してすぐに、ひと目惚れしてしまった女の子がいたんだ。俺はその子と絶対に付き合いたいと思って、友達に協力してもらってりとかして、その子と付き合いだした」

「上手くいったんですね」

「うん。その子は綾って名前で、ちょっと天然で抜けてるところもあったけど、可愛いだけじゃなくて凄く心優しい子だった」


話しながら、庄田さんの瞳がぼんやりと窓の外の方に向けられる。

その横顔は、どこか切ない。


庄田さんは話を続ける。


「でも綾は、ある日病気になった」

「……病気?」

「うん。手術が必要な病気で、すぐに入院したよ。
だけど腫瘍の位置や大きさ的に、手術が困難と言われてしまって。
勿論、病院側は手術に向けて色々考えてくれていたんだけど、手術が実現する前に容態が急変して、夏の終わりに亡くなったんだ」


話し終えると、庄田さんは再びこちらに視線を戻した。

切ない表情のままだが、瞳は優しい。



「そうだったんですね……。あの、綾さんの病気は、どんな病気だったんですか……?」

「喉だよ」

「え?」

「喉に悪性の腫瘍が出来たんだ」


その言葉を聞いた瞬間、思わず身体が硬直してしまった。

律と同じ病気だったから。