……部活、か。

ふと、脳内がフラッシュバックを起こす。それは中学時代の部活動の光景だった。

俺は男子バスケ部で、同じ体育館の隣のコートでは女子バスケ部が練習する日が多かった。

女バスの中心には、いつも律がいた。

俺も、自分で言うのはなんだけど、バスケは結構上手い方だと思う。背は特別高い方じゃないけど、足の速さと体力には自信があるし、中学時代は先輩が引退してからは一回もレギュラー落ちしたことがなかった。

でも、律は何ていうか別格で。

女バスは人数が少なかったからというのもあるけど、律は一年の頃からレギュラーで、絶対的エースとか言われていた。それでありながら、部内の先輩にも同級生にも誰にも僻まれることはなかったと思うし、寧ろ誰からも慕われていた。


だけど中二の冬に病気になって――律は学校をしばらく休み、バスケ部も、辞めた。


高校でも、おそらくバスケは出来ないだろう。病気は治っているとはいえ、声が出ないのに運動部は厳しいと思う。


あんなに上手だったのに。


声が出なくても入れる部活は探せばあると思うのだが、律はどこかの部に入ったんだろうか。

律を盗み見れば、席に着いて携帯を見ている。
もう帰るのか、まだ帰らずにこれからどこかへ向かうのか、分からない。


「ほらぁ、達樹早くー」

「あ、悪い」

コーヤに言われ、俺達は教室を出て体育館へ向かった。