「だから……さ。こんな言い方ズルいかもしれないけど……俺の頭の中は、ずっと律のことでいっぱいだった。ずっと謝りたくて、ずっと話したくて。それからーーちゃんと言えなかったけど、中学生の時、律のことが本当に好きでした。それから、今もーー好き」


俺の言葉に、律は静かに《……うん》と答えてくれる。


「高校に入学してからも、自分の気持ちに蓋をしていただけで、本当はずっと律を想い続けていたんだと思う。だからもし、律とまたこんな風に仲良くなっていなかったとしても、千花とは付き合ってなかったよ。それは分かる」

《うん……》

「あとはさ……。テレパシーがなかったら、律とは高校ではきっと仲良くなっていなかった、っていうさっきの話だけど」


正直、否定はし切れない、と俺は伝えた。


確かに、俺と律の今の関係は、間違いなくテレパシー能力がきっかけだ。
この力がなかったら、こんな風に毎日笑い合って過ごしてはいなかったかもしれない。


だけど律は、意外にも笑いながら《そうかもしれないよね》と答えた。


「怒らないの? もしくは悲しまないの? さっきはあんなに、泣きそうな顔してたのに」

そう尋ねると、律は一層、にこっと笑って。



《今さ、思い出したんだよね》

「何を?」

《確かに、きっかけはテレパシーだったけどさ》

「うん」

《テレパシー能力が初めて使えるようになったあの日、達樹君、私のこと一緒に帰ろうって誘ってくれたよね》


そう言われ、あの日のことを思い出す。
確かに誘った。変質者がどうっていう話を聞いて、心配になって。



《達樹君は、テレパシーがなくたって私のことを気にかけてくれたね。だからきっと、テレパシーがなくたって、私たちがまた話せるようになるのは時間の問題だったんじゃないかなって思いたい》


……俺も、そう思っていいのだろうか。自分で認めるには、ちょっとくすぐったいというか、疑問も残るけれど。



《もう。私がこう言ってるんだから、そんな顔しないで。あ、もしかしてあの日誘ってくれたのは、私を気に掛けてくれた訳じゃなくて、達樹君自身が変質者が怖くて、私に一緒に帰ってもらいたかったの?》

「ち、違う! それは断じて違う!」

慌てて否定すると、律が思いっ切り笑った。
声は聞こえないけれど、確かに、



笑った。