俺の言葉を聞いて、さっきまで射抜かれそうな程に真っ直ぐ俺を見つめていた千花が、俺から目を逸らして俯いた。

でも、また顔を上げ、俺の顔を見て。


「フラれたの初めてなんだけど」

「えと……ごめん?」

「もうやだ。なんなのあんた。嫌い」

「うん」

「うんって言わないでよ。嫌いな訳ないじゃん。好きだよ……」

千花の声は、分かりやすく震えていて……だけど涙は流さず、俺の目から視線を逸らさない。


そんな俺に、千花は続ける。
俺にとって、少し予想外の言葉を。



「……律のことを好きっていう気持ちは、分かるよ。可愛いし、明るいし、頭も良いし。私も……最初は意地悪しちゃったけど、今は律のこと、親友だって思ってる。私も律のこと、好き」

「千花……」

「だけど、友情と恋愛は別でしょ?」

「え?」

「友達して、今後も律と一緒に過ごしていくのは、律のことが好きなら簡単だよ。でも、恋人として今後もずっと律と一緒にいられるの? 会話、出来ないんだよ? 普通の恋人にはなれないんだよ?」

「千……」

「大変なのは律じゃなくて、律を支えていく長尾だよ。長尾が嫌な思いをするのは、私も嫌なの。だからお願い。私と付き合って。律とは、友達のままでいて」