だけど千花は、それでも俺から目を逸らさない。

今にも涙が溢れそうな大きな瞳で、俺を見つめ続けている。



「やっぱり、律のことが好きなんだね」

震える声で、そう言われる。

違うよ、そうじゃない、という言葉は、やっぱり出てこない。


目を瞑ると、脳裏に浮かぶのは律の顔。


律の笑顔が好きだ。
笑っていると安心する。
勿論、同情心なんかじゃない。

側にいたいと思う。
何かあった時に助けてあげられるようにとか、支えてあげたいとか、偉そうなことを考えている訳じゃなくて、ただ俺が律の側にいたいと思う。

あわよくば、いつも隣にいたいと願う。


……そう言えば、中学生の頃も律に対してこんなふうに思っていた。

律に片想いしていた、あの頃。



そうか。


ようやく気付いた。



「……うん」

頷いてから、小さく深呼吸をする。
そして。


「好きだ。律のこと」