「来てくれてありがとう。でも、ここにはいないみたいなんだ」

俺がそう伝えると、千花は頭を横に振った。


「ち、違うよ」

乱れる呼吸を整えながら、そう答える千花。


「私は、律を探してた訳じゃない。あんたを追いかけてきたの」


……俺?


「何で?」

「り、律を探しに行くのやめてほしかったから……」

「え……?」


千花は眉を下げ、切なそうな表情で俺をじっと見つめる。


そして。


「長尾はさ……もし、いなくなったのが私でも、そんなに必死に探してくれる?」

「え?」

質問の意味が分からず、俺は首を傾げる。


でも、それに続けた千花の言葉は、思ったよりシンプルだった。



「律のことが好きなの?」


だから、そんなに一生懸命に探すの? と、千花は揺れる瞳で真っ直ぐに俺を捉えた。