「長尾。律ならそんなに心配しなくても大丈夫だよ。お昼休みだし、お弁当はここにあるんだから、きっとすぐに戻ってくるよ」

立ち上がったものの、千花からそう言われてしまう。


「しっかりしてる子だし、そこまで過保護にならなくて平気だって」


また、過保護だと言われてしまった。


違う。違うんだよ。


確かに過保護だった時期もあったけど、今は、過保護になってるから探しに行きたい訳じゃない。それに。



最近、律は俺に対してたまによそよそしくなる。

その度に、俺は何だか凄く寂しい気持ちになる。


でも、普段通り話せるととても楽しくて。



戻ってくるのをただ待ってるだけじゃ、落ち着かない。



「やっぱり、探してくる。すぐ戻るから、先に弁当食ってて」

「えっ? あっ、長尾……!」


俺は律を探しに向かった。

水飲み場、体育館裏、裏庭。
何となく考えられそうな場所をしらみつぶしに探してみるも、見当たらない。


うちの体育祭は、外部から家族や親戚が見に来る行事ではないから、誰かに会いに行っている可能性は低いと思う。
他のクラスのブルーシートに行ってる可能性はあるけれど、それなら村田さんに伝えていくだろうし、そもそも弁当一緒に食う約束、していた訳だし。



「何でどこにもいないんだー」

思わず独り言を嘆くように呟くと、後ろから誰かの足音が聞こえた。

律か? と思って振り向くが、そこにいたのは。


「千花」

はあはあ、と肩で息を整える千花がそこにいた。

走ってここまで追いかけてきたのだろうか。というより、千花も律を探してくれていたんだろう。