「声は出せなくても、当日は応援してくれよな。あと、昼飯はコーヤとか尚也とか誘って、一緒に食おうぜ」

その言葉にも、律は頷きながら笑ってくれた……のだが。


「あと、千花もな」

そう言うと、少し表情が曇った。


「律?」

「……」

「……あ、もしかして千花とまた何かあった?」

そう聞けば、律は慌てたように首を横に振ってみせた。何かあった訳ではないようだ。
じゃあ、今の表情は一体?


ちょうどその時。


「なーがおっ」

噂をしてればなんとやらで、千花が話し掛けてきた。


「二人三脚、頑張ろうね」

「え? ああ、うん」

「なによ、そのリアクション! 薄っ」

「あ、いや、そんなつもりはないけど」

「足引っ張らないでよね!」

「足手纏いになるなってこと? それとも、走ってる時に物理的に足引っ張るなってこと?」

「何それ、面白っ」

そんなに面白いことを言ったつもりもないのだが、あははと楽しそうに笑う千花。
何やら機嫌が良さそうだ。


「律も、出場は出来ないけど、応援は一緒にしようね」

千花が律にそう言うと、律は笑顔で頷く。
だけど、やっぱり笑顔がどこか曇っている。千花は気付いていないようだけれど。