目線で律を追い掛けると、律と担任は廊下を出たすぐのところで何か話していた。

五分もしないうちに話は終わったらしく、担任はそのまま去っていき、律は俺の横を通って自分の席に戻ろうとする。


「律」

律を呼び止め、足を止めて振り返った律に「何話してたの?」と聞く。
すると律は、ちょっとぎこちない笑みを浮かべると、机の上に置いていた俺の手に触れた。


《ちょっと、付き合ってくれない?》

テレパシーでそう言われ、俺は屋上の扉前の階段の踊り場に連れてこられた。
テレパシーの存在を確認し合った、少しだけ懐かしい場所。もうすぐ一限目の授業が始まるから、あまり長話は出来ないけれど。


《さっきね、体育祭のことで先生に呼ばれたの》

階段の一番上の段に腰掛けて、足をプラプラさせながら、律は言った。

俺も律と同じ段に腰をおろし「体育祭?」と聞き返す。