「何でだよ?」と、コーヤは不満げな視線を尚也に向けながら反論するけれど。


「女子一人を男子のグループの中に入れるって、あんまり良くないんじゃないか? 永倉さんが変に誤解されるかもしれないじゃん。女子とは話さないのに男とは話すんだ、とか」

「誘うのは俺達なんだから、そんなの関係なくない?」

「そう思う人もいるかもしれないってことだよ。もしそんな噂が流れたら、永倉さんはますます友だちを作り辛くなるぞ。勿論コーヤが間違ってるとは全く思わないし、寧ろ正しいと思うけどさ」

尚也の意見に、コーヤは未だ納得いかなそうにしていたが、俺はその意見が分からなくはなかった。

コーヤは俺に視線を向け「達樹はどう思う?」と俺に意見を求めてきた。


「……どっちの言っていることも正しいと思う。でも、り……永倉の今後のことを考えたら、確かに今ここで一緒に弁当食うのは微妙かもな。入学してまだ二週間だし、一人で弁当食ってるのは永倉だけじゃないじゃん? もう少し様子見てもいいんじゃないかな」

そう言うと、コーヤも「まあそうか」と納得した様子になる。


話題はすぐに変わって、五月の連休明けに行われる学年キャンプの話になった。


その会話をしながら、俺はもう一度だけ律に視線を向けた。律は相変わらず無表情で飯を食っていた。


その無表情が寂し気に見えるのは、俺の気のせいだろうか。



……でも大丈夫。律は元々明るい奴なんだ。中学時代は友達がたくさんいて、クラスの人気者だったんだ。

声なんか出なくたって、きっかけさえあれば友達なんていくらでも出来るだろう。そう思った……。