――それは、いつか君に聞かれた言葉。
『ねえ、達樹君ってさ、超能力とか信じる人?』
夕日が差し込む、二人きりの放課後の教室で、律は俺に、突然そんなことを聞いてきた。
『何言ってんだ、急に?』
『何となく』
『妙なこと言ってないで、お前も早く日誌書けよ。これ書かなきゃ、日直は帰れねえんだぞ』
『平凡な日常にちょっとしたスパイスを加えてくれる超能力を、信じますか? 信じませんか?』
『俺の話を聞け』
律は時々、突拍子もなく変なことを言う。
不思議ちゃんという訳では決してない。多分本人は深いことは何も考えていなくて、思いついたことをそのまま口にしてるだけなのだろう。
ていうか、超能力が使えたら、ちょっとしたスパイスどころか、その気になれば世界だって変えられるだろ。
こんな超能力の話はどうでもいいから、日誌を書き終えてさっさと帰りたい。
今日は部活が休みで、本当ならとっくに下校している時間だ。
しかし、今日に限って日直当番。その上、律はこんな調子だから、仕事がまだ終わらない。
『ったく、何で俺はいつもお前と一緒に日直当番なんだろうな』
『名字が、長尾と永倉で出席番号が連続しているからだね』
『そんなことは分かってる』
まあ、ほとんど話したことのない女子と一緒に当番やるくらいなら、相手が律で良かったけど。
とはいえ、こんな調子で喋っていたら仕事がいつ終わるか分かったもんじゃないぞ。日誌を書くことに集中しよう。