茜の為のサービスだと。
「…じゃあ、これで頼むわね」
店長は受話器を取り、すぐ電話した。
数時間後、お店にピザ屋のサービス商品が届いた。
届く前に、お皿などをテーブル席にセッティングしていた。
海里くんは届いた商品をテーブルに並べて、私はお茶などを準備していた。
天沢さんと店長は、キッチンで何かを作っていた。
芹沢は、携帯を開いて何か見ていた。
「みんな、揃ったわね。茜ちゃんの誕生日おめでとう!」
みんなはコップを持ち、乾杯をした。みんなは笑顔だった。
その時、芹沢は携帯を開いて、私達に見せた。それは、茜の写真だった。
「…亡くなる前に最後に撮った写真。俺と海里と一緒に帰っている途中で、茜を撮った」
芹沢はそう言って、みんなが見えるようにテーブルの端っこに置き、携帯を壁にくっつけて茜の写真が見えるようにした。
私たちは、テーブル席二つをくっ付けて、茜の写真を見た。
「……茜、誕生日おめでとう」
芹沢が言うと、みんなは笑顔で言った。
「誕生日おめでとう! 茜(ちゃん)」
芹沢以外のみんなが、同時に携帯の中にある茜の写真を見て、笑顔で祝福をした。
茜の死からもう、二年ほど。私は茜が亡くなって、悲しくなかったわけではない。
ただ、身内から死んだ人が現れるとは思わなかったんだ。死ぬということが、どれだけ悲しくて寂しいのかが分かったからだ。
茜が死んで、泣いている人が多かった。
特に茜の母親だ。
うちの母親と茜の母は、二人とも姉妹だ。
そこで1番気に入られたのは、茜。
私はただ隅っこにいるような邪魔もの扱いだ。だから、私は分からなくなったのだ。
家族の愛情、死ぬということ、そして、生きることがめんどくさくなっていた。
その時に芹沢達と会わなければ、私は今のように笑顔で笑っていただろうか。
「じゃあ、撮るよ! はい、チーズ」
店長が片手にスマホを持ち、食事を食べて話したあと、パチリと写真を撮った。
この写真は、みんな笑顔で撮れた写真であった。芹沢だけムスっとしていたけど、芹沢らしい。
茜、見てる? 私達は、元気だよ。
これからも私たちを見ててね。