私は下に俯きながら、隣の椅子においてあったカバンを手に取り、海喫茶店を出た。

カラン カラン カラン

「あーあ。いいの、暁。女子にあんなこと言うの。珍しいじゃん」 

海里は頬杖をつき、俺を見てくる。

「…何がだよ」

「分からないならいいよ。だけど、暁が誰かを許したのは、茜(あかね)以来だから」

俺は海里に何も言えなかった。

何もなかったようにしていたけど、俺も分かっていた。

あいつは俺と似ているんだって。

だから、学校では何事のなかったように振舞っている。

茜と同じように見えたんだ。

だから、救いたくなったのは本当だ。