「はーっ、疲れた……」
その日の夜、舞子はようやく仕事のノルマを終えた。いつもの日課のはずなのに、今日は特に疲れていた。それもそのはず。舞子は今日、唯斗の家に行き、何もすることなく帰ってきたのだ。
「あのバカの家に行ったのは、本当に余計だったわ」
彼の顔を思い出す度に腹が立ってくる。
「……シャワー浴びよう」
今更一人でイラついていても仕方がない。舞子は、お風呂場に向かおうと立ち上がった。
その時、携帯のバイブがなった。何だろう。携帯を開くと、なんと、唯斗からメールが来ていた。よく分からないまま、メールを開く。
『夜分にすまない。ひとつ聞きたいことを思い出した。お前は、あんぱんは粒あん派か? それともこしあん派か?』
「……は?」
なんだ、このメールは。思わず拍子抜けしてしまった。わざわざメールしてまで聞くことだろうか。そもそも何のために聞いてきたのか。謎である。とりあえず舞子は、『こしあん派』と返事をした。まさか、初めてのやりとりがあんぱんの話題になるとはとは思わなかった。またバイブレーションが鳴る。唯斗からの返信であった。
「早っ」
『私もだ。気が合うな。やはり私たちは仲間だ』
「いや、単純すぎる」
こんな薄いつながりで、仲間だと言われたのは初めてだ。彼はいったいどんな人生を送ってきたのだろう。いやそれ以前にどんな人付き合いをしたら、あんぱんの好みの一致で相手のことを仲間と呼べるようになるのだろうか。
「……本当、謎だわ」
舞子は、今度こそシャワーを浴びようと立ち上がった。がその瞬間、携帯が震えた。
「今度は何よ!」
思わず携帯に向かって怒鳴る。
『今日は済まなかった。お詫びにと言ってはなんだが、私に出来ることなら何でもするつもりだ。この際だから、聞いておきたい。やりたいことは見つかったか』
「謝罪が後……」
なぜあんぱん云々を先にしたのか。優先順位がまるで逆である。舞子はこれにどう返信したらいいのか分からなかった。
舞子だって、伊達に二週間も通っていた訳では無い。毎日、ちゃんと考えてはいたのだ。舞子が、本当にやりたいこと、やるべき事、「あの子」が望むことを。
ある程度ひとつの答えにたどり着いたものの、果たして、この答えでいいのだろうか。不安であった。
『何が正解かなんて、分からない』
ふと、唯斗の言葉を思い出す。
そうだ。正解なんて誰にもわからない。この道が正解だと信じて、進んでいくしかないのだ。
舞子は、メールに返信をした。
『私は、これからも変わらずあなたの研究に協力するわ』
『本当にそれでいいのか?』
『私、分かったの。あなたに協力することで、私の目的も果たされるって。だから、これでいいの』
『お前の目的は、なんだ』
『私の目的は、立花久美子を守ること。もう、悲劇は繰り返させない。絶対にあの子のようにはさせないわ』
これが、舞子の出した答えだった。立花久美子を守ることで、あの子の弔いになると、彼女は考えたのだ。
『私も同じだ。互いに彼女を守ろう。これからもよろしく頼む、舞子』
唯斗からの返信を読み、舞子は携帯を閉じた。
「私、頑張るから。……だから、見守っていてね」
舞子は携帯を握りしめて、大切なあの子の名を呼んだ。
「――――――」
その日の夜、舞子はようやく仕事のノルマを終えた。いつもの日課のはずなのに、今日は特に疲れていた。それもそのはず。舞子は今日、唯斗の家に行き、何もすることなく帰ってきたのだ。
「あのバカの家に行ったのは、本当に余計だったわ」
彼の顔を思い出す度に腹が立ってくる。
「……シャワー浴びよう」
今更一人でイラついていても仕方がない。舞子は、お風呂場に向かおうと立ち上がった。
その時、携帯のバイブがなった。何だろう。携帯を開くと、なんと、唯斗からメールが来ていた。よく分からないまま、メールを開く。
『夜分にすまない。ひとつ聞きたいことを思い出した。お前は、あんぱんは粒あん派か? それともこしあん派か?』
「……は?」
なんだ、このメールは。思わず拍子抜けしてしまった。わざわざメールしてまで聞くことだろうか。そもそも何のために聞いてきたのか。謎である。とりあえず舞子は、『こしあん派』と返事をした。まさか、初めてのやりとりがあんぱんの話題になるとはとは思わなかった。またバイブレーションが鳴る。唯斗からの返信であった。
「早っ」
『私もだ。気が合うな。やはり私たちは仲間だ』
「いや、単純すぎる」
こんな薄いつながりで、仲間だと言われたのは初めてだ。彼はいったいどんな人生を送ってきたのだろう。いやそれ以前にどんな人付き合いをしたら、あんぱんの好みの一致で相手のことを仲間と呼べるようになるのだろうか。
「……本当、謎だわ」
舞子は、今度こそシャワーを浴びようと立ち上がった。がその瞬間、携帯が震えた。
「今度は何よ!」
思わず携帯に向かって怒鳴る。
『今日は済まなかった。お詫びにと言ってはなんだが、私に出来ることなら何でもするつもりだ。この際だから、聞いておきたい。やりたいことは見つかったか』
「謝罪が後……」
なぜあんぱん云々を先にしたのか。優先順位がまるで逆である。舞子はこれにどう返信したらいいのか分からなかった。
舞子だって、伊達に二週間も通っていた訳では無い。毎日、ちゃんと考えてはいたのだ。舞子が、本当にやりたいこと、やるべき事、「あの子」が望むことを。
ある程度ひとつの答えにたどり着いたものの、果たして、この答えでいいのだろうか。不安であった。
『何が正解かなんて、分からない』
ふと、唯斗の言葉を思い出す。
そうだ。正解なんて誰にもわからない。この道が正解だと信じて、進んでいくしかないのだ。
舞子は、メールに返信をした。
『私は、これからも変わらずあなたの研究に協力するわ』
『本当にそれでいいのか?』
『私、分かったの。あなたに協力することで、私の目的も果たされるって。だから、これでいいの』
『お前の目的は、なんだ』
『私の目的は、立花久美子を守ること。もう、悲劇は繰り返させない。絶対にあの子のようにはさせないわ』
これが、舞子の出した答えだった。立花久美子を守ることで、あの子の弔いになると、彼女は考えたのだ。
『私も同じだ。互いに彼女を守ろう。これからもよろしく頼む、舞子』
唯斗からの返信を読み、舞子は携帯を閉じた。
「私、頑張るから。……だから、見守っていてね」
舞子は携帯を握りしめて、大切なあの子の名を呼んだ。
「――――――」