いつか、いつか。
今すぐじゃなくていい。いつかでいいから。
みんなに受け入れてもらいたいな。みんながみんな、わたしを好きになることは難しくとも、せめて理解してほしい。
何度も夢を見ては、現実に打ちひしがれてきた。理不尽な現実は、理想の夢を描くことさえ取り上げて、残酷なほうへ堕としていく。
だから、期待するのをやめた。
だって、思わなかったんだ。
こんな日が訪れるなんて。
「謝ってくれてありがとう」
こみ上げる涙が、温かい。
あぁ、幸せだ。
環くんとの距離を埋められたら、もっと幸せなのに。
欲張りになった心は、好きな人に近づく理由を手探りで追い求めている。
その日はもう、病院行きのバスはなかった。そのため翌日の午前に病院に行くことにした。学校は、午後から行く予定だ。
わたしはバス停から、十分遅れて来た病院行きのバスに乗った。
後方の座席に座り、遠くに見える学校を眺めた。今頃、一時間目が始まり、授業しているだろうか。
バスが動き出し、あっという間に学校が見えなくなった。
昨日はクラスメイトと少し打ち解けられたり、環くんに名前を呼ばれたり、嬉しいことがたくさんあった。いいことがありすぎて、逆に怖いくらい。
だけど、今日会ったら、また環くんは離れていっちゃうのかな。昨日の優しさをなかったことにされちゃうのかな。
「……やだな」
わたしは、なかったことになんか、したくないよ。
ううん。
できないんだ。
とても、とても、愛おしすぎて。
終点の病院に着き、バスを降りる。病院内に入り、受付に行こうとして足を止めた。
「どうして、」
環くんがここにいるの?
環くんが診察室のある方向から歩いてきた。無意識に物陰に身を潜める。
なんとなく、隠れちゃった……。
見てはいけないものを見てしまった気分だ。
環くんはわたしに気づくことなく、病院を出て行った。
受付をすませ、待合室で順番を待っている間、環くんのことが頭にこびりついて離れなかった。