「……た、助かった……?」



一体誰が、わたしを助けてくれたんだろう。


とりあえず安堵しつつ、体の向きを直した。



「莉子ちゃん、大丈夫!?」


「環、くん?」



目の前には、動揺している環くんがいた。

ウソ、これは幻覚……じゃないよね。環くんが、助けてくれたの?


心臓が甘く軋む。きゅぅ、とへんてこな音を立てて縮こまった。



「ごめん、俺のチームがパス出しミスっちまって」


「そんな痛くなかったし、大丈夫だよ」



久しぶりに、環くんを近くに感じた。

久しぶりに、環くんがわたしの名前を呼んでくれた。


それだけで痛みなんか忘れてしまう。



「当たったのって、左?」


「う、うん」


「それならなおさら、今日明日にでも病院で診てもらったほうがいい」


「いや、ホント、大丈夫だよ?」


「万が一って場合があるからね。心配なんだ」



環くんが迷惑だって突き放したくせに。わたしから離れていったのは、他でもない、環くんなんだよ。


それなのに、どうして。

どうしてまた優しくするの?本当に関係を元に戻したいなら、心配なんかしないでよ。優しくなんかされたら、わたし、自惚れてしまうよ。


環くんの、バカ。

ずるい。
ずるすぎるよ。


ほら、わたしは単純だから、いとも簡単に想いが積もっていく。


この想いをどうしてくれるの?どうせ責任も何も取ってくれないくせに、思わせぶりなことするのは卑怯だよ。