依世ちゃんの両手と、わたしの左手。触れてる部分は、まさにわたしたち二人の絆の繋ぎ目だ。
以前よりも強固なものとなるよう、指の関節を弱々しく折り、握り返す。
――ピピーッ!
刹那、先生が盛大に笛を鳴らした。
「はい、試合終了。次の対戦に移るぞー」
先生のかけ声に、わたしと依世ちゃんは顔を見合わせて立ち上がる。
わたしたちが試合する番だ。
「頑張ろうね、莉子」
「うん!」
試合コートのある真ん中に移動し始める。勝負意欲はありあまるほど満々にある。チームメイトの足を引っ張らないようにしなくちゃ。
「危ないっ」
「え……?」
左側から、環くんの叫び声が耳の奥をつんざいた。
なに?
反射的に動きを止めて、視線を左に泳がす。
視界の隅に映る、バスケットボールと、環くんの走っている姿。
バスケットボールが、こちらのほうに飛んでくる。このままじゃ、依世ちゃんに当たってしまう。
デジャヴだ。
鼓膜を打ち震わす、ガラスの割れる甲高い音。野次馬の耳障りな雑音。誰かの絶叫と、飛び散る鮮血。
脳内に再生された生々しい場面ごとに、生唾を飲み込む。今の今まで大して気にも留めていなかった左腕の包帯が、急にわたしに追い打ちをかける。
もう、何も、突き刺さないで。
あの日と同じように、手を伸ばす。
わたしより数泊遅れて、依世ちゃんが迫り来るバスケットボールに気づいた。衝動的に悲鳴が上がる。
「っ依世ちゃん!」
ドンッ!!
躊躇なく依世ちゃんの盾となったわたしの左肩に、バスケットボールが激しくぶつかった。
当たった勢いに押され、体勢を崩してしまった。前方に倒れそうになる。
や、やばい!
転びかけた寸前、誰かがわたしのお腹部分に腕を回し、斜めにかたむいたわたしの体を支えてくれた。