みんなとは違う異常者がいれば、誰だって噂を信じて怖がる。気味の悪い存在には近づきたくないに決まってる。わたしも反対の立場だったら、そうしていたかもしれない。


「みんなと同じ」が一番で、「みんなと違う」が個性と受け止めるには、わたしたちはまだ未熟すぎた。



「ごめんね、急に暗い話して」



依世ちゃんは何度も頭を振った。



「こんなわたしでも、友達でいてくれる……?」



弱々しく尋ねると、依世ちゃんの両手がわたしの左手をくるんだ。


温度のない左手。いくらぎゅっと温めても、そこに温度は宿らないというのに。依世ちゃんはそれを承知の上で、きつすぎるくらい力強く握った。



「なにわかりきったこと聞いてんの」


「え?」


「友達でいてくれる、なんてさ」



左手にはどうやったって、熱は帯びない。



「当たり前じゃん!」



代わりに「ありがとう」という気持ちが、震える指先に染み込んでいった。


愚問、だったね。



環くんが、わたしに変わるきっかけをくれた人だとしたら。


依世ちゃんは、わたしと一緒に変わってくれた人。


今では、わたしの噂を口にするクラスメイトはいなくなったのは、依世ちゃんが『みんな、もうやめなよ!!』って叫んでくれたおかげ。


わたしが環くんに告白できたのも、依世ちゃんがわたしの前髪を切って、背中を押してくれたから。



依世ちゃんが教えてくれたんだよ。

自分の信念を曲げずに立ち向かうことを。



「確かに、莉子の左腕は、あたしや他の人とは違うかもしれないけど!」



心なしか、依世ちゃんの眼は潤んでいた。

キラキラ、きらめく。
まるで一等星のように。



「それ以上に、あたし、知ってるよ。莉子のいいところ、たくさん」


「依世ちゃん……っ」


「それなのに、莉子を嫌いになれるわけないじゃん」



莉子はバカだなあ、と。

依世ちゃんが半分呆れ、半分愛おしみながら、さらにきつくわたしの左手を包み込んだ。