居間に行くと、昔ながらのちゃぶ台に朝食が並べられていた。
お茶碗に盛られたほかほかのご飯、サバの味噌煮、シーチキンサラダと目玉焼き。それから、大根たっぷりのお味噌汁。
どれもおいしそう。
古びたテレビからは、政治家のニュースが流れている。
「莉子ちゃん、おはよう」
目を線にして挨拶してくれたおばあちゃんに、微笑みながら挨拶を返す。
わたしの名前は、矢崎(ヤザキ) 莉子。
高校二年生に進級したばかりの、十七歳。
事情があって今年の春、正確に言うと二週間前から、父方の祖父母の家にお世話になっている。
学校もこっちに転校してきて、環境が一変して、制服がセーラーからブレザーになって。
わたしの生活はガラリと変わった。
祖父母の家には長期休みのたびによく来ていたけど、ここで毎日を過ごすとなるとやっぱり全然違う。
新鮮だったものが、新鮮ではなくなって。
真新しく思えた景色は、だんだん窮屈になっていった。
もう、昔のように胸を高鳴らせることがないのが、ひどく侘しい。
「おじいちゃんもおはよう」
「おはよう」
ちゃぶ台の前に座りながら、新聞を読んでいるおじいちゃんにも挨拶をした。
よく笑うおばあちゃんと、無口なおじいちゃん。
二人とも、幼いころからわたしのことを大事にしてくれた、温かい人たち。
今でも、こんなわたしを大切に思ってくれている、優しい人たち。
わたしはそんな二人のことが、大好きだ。