初恋を反すうしていて、上の空になってました。

反省してます。


目の前では、依世ちゃんの言うとおり、体育館の右半分を用いてバレーの試合が行われていた。いくつかのチームに分かれて、対戦しているらしい。


試合していないチームは、今のわたしと依世ちゃんみたいに脇で試合を観戦したり審判をしたりしている。


ちなみに、女子はバレーだが、男子は体育館の左半分を使ってバスケットボールの授業を試合形式で行っている。



「バレーは両腕を使うから、今回はあきらめて見学したほうがいいんじゃないの、って言ったの」



依世ちゃんの視線が、わたしの左腕に落とされる。

……そっか。
依世ちゃん、心配してくれているんだ。


血液の通っていない“ヒト”ならざる左腕だからか、治りが遅く、未だに包帯が巻かれてある。痛感は全くないから、包帯があってもなくてもわたしにはあまり関係のないことだけれど。


依世ちゃんが心配してる理由は、自分をかばって傷を負った、というのもあるが、わたしの悪い噂に関する気遣いも少なからず含まれている。


屍のように冷え切った、感覚の働かない、わたしの左腕。

このバケモノじみた腕を忌み嫌い、恐れていた日々が、もはや懐かしい。



「見学しなくても平気だよ。バレーできる!」


「本当に?」


「うん!葉上先生……あっ、わたしの担当医にはちゃんと許可をもらってるし」



それでも、依世ちゃんの表情には心配の色が滲んでいた。


わたしはまだ、依世ちゃんに明かせていない。
わたしの噂の真相を。

知らないのに、依世ちゃんは、わたしを気遣ってくれている。



このまま話さなくても、依世ちゃんとの友情は崩れたりしないだろう。


でも、それでいいの?わたしは無意識に、逃げてるんじゃないの?



友達だからって、全て話さなくちゃいけないルールはない……けど。


何も言わずに、待っている気がした。

わたしから秘密を打ち明ける瞬間を。