「ちゃんと応えてくれて、ありがとう」



わたし、うまく笑えてるかな。

笑えてたら、いいな。


環くんの前で、情けない態度を取りたくない。これはわたしの意地。ちっぽけなプライドみたいなものだ。



「こ、これからも友達でいてくれる?」



告白しちゃったけど、できれば今までどおり話したい。


この告白のせいで、環くんと疎遠になりたくない。




――環くんの返事は、なかった。




黙ってしまった環くんの反応をどう捉えていいのかわからなくて、不安になる。いくら待っても、環くんは黙り込んだまま何か言うことはなかった。


どうして、何も返してくれないの?

この沈黙は、友達に戻れないってこと?


そんなの、嫌だ。


沈黙も、返事を聞くのも、怖い。

せめて、友達でいたいよ。これはわたしのわがままなのかな。



「じゃ、じゃあっ、また明日ね」



わたしは沈黙が途切れる前に、環くんの別れの挨拶を待たずに公園を飛び出した。



……どうしよう。
どうしよう。

また、逃げちゃった。


前髪を切っただけじゃ、やっぱり変わらない。見た目は生まれ変われても、中身はおんなじまんまだ。



全速力で走っていても、ちっとも前に進めていない気がして、息だけが苦しくなっていった。ぜえぜえと肩で呼吸しても苦しくなる一方で、楽になる方法が見当たらなかった。


前に進み続けるのは、難しいな。



瞬きをすると、涙が一つ流れる。熱くも冷たくもない。ぬるい涙を、左手の指を全部使って、強めに拭い取った。


今になって、自惚れていた恥ずかしさと失恋した悲しみが、同時にこみ上げてきた。



それでも、環くんへの「好き」を告白したことに、これっぽっちも後悔はしていない。