わたしまで、泣きたくなってきた。


そばにいたいよ。

この先も、ずっと、ずっと。



「好き」



気がついたら、想いを告げていた。



……あれ?

わたし、なに言ってるんだろう。


さっき自覚したばかりなのに。


今、告白するつもりなんてなかったのに。


どうしてかな。
環くんがいなくなっちゃいそうで。

今、この瞬間、伝えたくてたまらなくなった。


伝えなくちゃいけないって、わたしの中の何かが叫んでいた。



「わたし、環くんのことが好きなの」



環くんは驚きを隠せない様子で、目を瞠る。見開かれた瞼は徐々に下がっていき、一度瞬きをすると、小さく震わせていた。下まつ毛がかすかに揺れる。


仲良くなり始めたばっかりだけど、どうしようもなく好きなの。

何よりも、誰よりも、特別。



「ありがとう」



環くんの声音が直接、わたしの高ぶった心に届く。胸のど真ん中を突いて、苦しくさせる。けれど苦くはない。甘くもない。



「だけど、ごめん」



身体の熱が引いていった。

唇を、強く噛む。


さっきとは違う苦しさが、わたしを襲う。今度はちゃんと苦い。ズン、と足元から重たくなった。



「俺、誰とも付き合う気ないんだ」


「……そ、っか」



バカだなあ、わたし。

ほんのちょっと、期待してしまった。


もしかしたら本当に、わたしも環くんの特別になれてるんじゃないか、なんて。


そんなわけ、あるはずないのに。
勘違いも甚だしい。