「いい加減、噂じゃなくて矢崎さん自身を見ようよ」


「学級委員だからっていい人ぶってんじゃねぇよ」


「お前だって、今まであいつのこと無視してたくせに」



数名の男子が、咲間さんに文句をぶつける。


咲間さんは感情的になることなく「そうだよ」とあっさりと認めた。



「あたしも、あんたたちと一緒でかっこ悪かった。だからこそ、もうやめたいの!」



教室の外じゃ、咲間さんが今どんな表情をしているのか想像もつかない。けれどきっと、咲間さんも勇気を出しているんだ。自分を、みんなを変えるために。


今度は、わたしの番だ。

さあ、進め。



ガラッ!!
と、わたしも勢いよく扉を開けた。

教室にいた全員の目が集まる。


ざわつく教室に、一歩、踏み入れた。



「矢崎さん!」


咲間さんがわたしの前まで駆け寄ると、深々と頭を下げた。



「今まで避けててごめんなさい」


「咲間さん……」


「本当はずっと謝りたかったの。でも、なかなか話しかけられなくて」



もしかして、昨日授業中に目が合ったのは、それが理由だったのだろうか。



避けられて辛い思いをしたことは、簡単に忘れられない。忘れたくても、心に傷として残ってしまっている。


けれど。



「って、こんなの言い訳でしかないよね。本当にごめん!」



けれど、咲間さんは、事実をなかったことにせずにきちんと抱えて、誠心誠意謝ってくれた。今だって自分を責めて、誰よりも先に懺悔してくれている。


その真っ直ぐな気持ちは、わたしの元にありのまま届いてる。